堀 陽子選手レポート(ドイツ編)

6月8から7月8日までドイツに行ってきました。

まず、6月12日にハーフアイアンマン「KOHLER HAARDMAN」に出場。トーマス・ヘルリーゲルやロタ・レダー、ニナ・クラフトなどハワイで上位に入る選手が名を連ねる中、私も日本代表として彼等と同じスタートラインに立ちました。当日の気温は15℃、雹も降り雷も鳴りました。周回コースの為、レース中の各選手の位置が確認できたので、自分のレース展開も確認できましたが、それにしても、女子トップのニナ・クラフトが先頭を引く様子は、私のものとは格段の違いがありましたし、ニコル・レダーやカチャ・シューマッハーの力強い走りを目の前にして、自分の力の物足りなさを実感しました。ここでは、ヨーロッパの強さを見せつけられた同時に、世界トップクラスの選手と一緒に戦える場に参加させてもらえるチャンスを与えてもらえたことが、私のまた一つ貴重な経験になりました。
<女子>
1. ニナ・クラフト(GER)             
2. ニコル・レダー(GER)
3. カチャ・シューマッハー(GER)
4. ベリンダ・グレンジャー(AUS)
5. ウテ・ミューケル(GER)
6. シルク・ハマカー(GER)
7. オリシア・プリスタイコ(UKR)
8. チェスニック・マリア(POL)
9. 堀 陽子(JPN)
<男子>
1. ティモ・ブラー(GER)
2. トーマス・ヘルリーゲル(GER)
3. ロタ・レダー(GER)

ハーフアイアンマンを終えた後、7月4日に行われる「ケレ・チャレンジ・ロート」参加のため、場所を移動しました。レースまでは3週間。練習というよりも、いかにコンディションを整えていくかに焦点を絞り、残りの日を過ごしてきました。このケレ・チャレンジの目標は、「今年立て続いているレースの中で、どれだけできるか=自分を試すためのもの」でした。3月にアイアンマンNZ、5月にアイアンマン・ジャパン、その3週間後にハーフアイアンマンを走り、その3週間後にケレという順。ドイツで出会った海外のプロ選手たちからも、「このあいだもジャパンに出たんだよね。フーッ、すごいハードスケジュールでよくやるね。」と口々に言われた。幸いにも、あれだけきついレースだったジャパンの疲れが後を引かず、うまくコンディションが上向いていった。ただ、今回は体調を優先し、練習量をかなり押さえていたので、レースでのスタミナだけが少し心配だった。レース週に入ると、記者会見などいろいろと忙しくなっていった。私は、今回2回目の出場なので、そういったことも少し?は落ち着いて応対できたのではないかと思う。さて、ここでのレースも、すごい顔ぶれが揃った。男子では、クリス・マコーマックにロタ・レダー、ティモ・ブラー、マイケル・ロバートにオスカー・ガリンデス、女子はニコル・レダーにベリンダ・グレンジャー、ウテ・ミューケル、日本から奥田庸子選手、彼らはすべてアイアンマン優勝経験者である。(そうです、私もでした。)他にも、各国からアイアンマンではトップを争う選手が今年も揃いました。

レース当日は、晴れ。朝も寒くなく、コンディションはばっちりでした。参加者が多い為、ウェーブスタート。私たちプロは、6時30分にスタートしました。体調は大分良く、昨年の反省も踏まえて「焦らず落ち着くこと」に専念。そして、今回の目標である「今自分の置かれている状況の中でどれだけできるか」を考え、レース中の自分を余裕を持ってコントロールさせるよう努めました。スイムでアップした時は、プロでバイクが残っている数は少なかったのですが、タイム的には58分と悪くはない出来でした。そして、バイクで少しずつ上位に上がりたいところでしたが、途中2人の女子選手に抜かれてしまい、それでも焦らず見えなくならない範囲で走りました。ここのコースは、スピードコースと言っても所々に傾斜10%の坂があり、また2周目からは風が強くなり、簡単にスピードダウンしてしまいます。走り方が意外と難しく、5時間10分台を目指していたのが、結局5時間27分。抜かれたうちの1人を最後に抜き返して、8位でバイクフィニッシュ。そしてランに入ってから3km地点で、バイクで抜かれたもう一人の選手を抜き、7位に前進する。ランは、先日のジャパンで苦しい思いをした反面、今回はいつもの走りができた。それに、雲も出てきて涼しくなり走りやすいコンディションになった。折り返すコース上で、上位との差を確認する事が出来、まだ上位に届きそうな感触を得る。しかし、トップのベリンダやランで爆走するニコルの勢いは違った。自分のリズムを崩さないよう走り、ハーフを過ぎた辺りで6位に上がった。あとは、そのままゴールまでいけるのを願うばかりだったが、最後の折り返し29kmをターンすると、まだすぐ後ろに何人か勢い良く走る女子選手がいた。負けられない。残り3kmを過ぎ、あともう少しでゴールだから踏ん張らなくてはと思った瞬間、あっという間に抜き去っていった女子選手がいたが、スピードが違いすぎてもうついていけなかった。ゴールを迎え、順位は7位。溢れるほどの観客の中を通り過ぎ、ゴールタイムは9時間48分。今回の結果は、自分の目標としていたものにある程度値するものだと思う。しかし、最後抜かれてしまったこと、近いところに2人走っていた事を考えると、まだ勝負強さという面では力不足を感じた。
それにしても、この大会は、世界でも稀にない人気のある大会ではないでしょうか。観客数の多さには、レース中でも驚くばかりでした。今年は、例年より更に増えて、13万人の観客がいたと言います。知っている人が全く居なかったにも関わらず、レース中は「Yoko!」とあちらこちらで名前を呼んで応援してくれる人、また、レース中の選手でさえも応援してくれました。海外のプロ選手との交流も深まり、また一般の選手からもたくさん声をかけてもらい、本当に楽しく貴重な体験をしてきました。大会関係者の方々や長い間お世話して下さったホストファミリーには本当に感謝し、こういった経験をステップにして、これからも更に頑張りたいと思います。

この後、少し休息期間を設けリフレッシュさせ、10月のハワイに向け準備していこうと思います。

プロトライアスリート
堀 陽子


<ケレ・チャレンジ>
女子                Total   Swim  Bike   Run
1.Leder Nicole(GER)     9:13:57   52:42  5:25:41 2:52:46
2.Granger Belinda(AUS)  9:16:00   55:05  5:03:11 3:13:57
3.Muckel Ute(GER)     9:34:26   50:01  5:15:24 3:24:00
4.Funk Heike(GER)     9:42:26   52:44  5:09:57 3:36:36
5.Jesberger Heidi(GER)   9:45:25   55:16  5:21:52 3:25:20
6.Schaffer Viola(HUN)    9:46:49   1:13:51  5:32:11 2:54:33
7.Yoko Hori(JPN)      9:48:36   58:49  5:27:47 3:18:29
8.Jungfer Isabella(GER)   9:57:23  1:06:30  5:26:08 3:20:26
9.Danais Marie(CAN)    9:58:13   53:03  5:28:37 3:32:51
10.Osterburg Astrid(GER)   10:00:04   59:38  5:29:15 3:27:20 

男子
1.Mccormack Chris(AUS)  7:57:50  47:59  4:26:54  2:40:23
2.Al-Sultan Faris(GER)  7:58:57  45:45  4:24:04  2:45:57
3.Bracht Timo(GER)    8:08:03  50:05  4:25:05  2:50:46
4.Lovato Michael(USA)   8:21:45  50:05  4:40:49  2:47:53
5.Leder Lother(GER)    8:25:14  50:11  4:31:02  3:01:18