堀 陽子選手/ニュージーランド・アイアンマン(3/4開催)大会レポート


 22回目を迎えた今年のアイアンマンNZは、過去最高の参加人数、1418人
のエントリーとなりました。今年のNZの夏は暑い日が続き、レース3日前
までは風も無く、穏やかでお天気の良い日が続いていました。例年18℃前
後の湖の水温も、今回は20℃を上回り、レース日のコンディションも期待
できそうでした。しかし、2日前から風が強くなり、湖は海のように波が
高く、このままではレースの日が心配だと懸念されていました。ニュージ
ーランド全域で、この2〜3日の間に台風のような強風が吹き荒れ、各地で
も風による被害がある中、アイアンマンの開催される当日は更に風が強く
なりました。天気は良いのに、風は一向に止む気配が無く、とても長い時
間の協議の上、結局スイムの中止と、バイク、ランでも距離を半分にする、
90km、21kmという決定が下されました。選手の間では、非常に残念だとし、
嘆く選手が多く居ましたし、実際私も、バイクとランだけでも本来の距離
で行えるのではないかと残念に思いました。しかし、大会側も安全性を第
一に考えた上での判断でしたので、気持ちをすぐにレースに切り替え準備
にかかりました。

 スタート時間は11時に決定し、バイクのタイムトライアル形式で、ゼッケン
No.1よりプロ男子、女子の順で始まりました。プロが30秒インターバルでの
スタートに続き、エージグループの選手は、男子、女子の順で5秒おきでの
スタートとなりました。

 私は、プロ女子で5番目に名前を呼ばれ、人垣の中スタートを切りましたが、
スタートしてすぐの湖岸沿いの道に出た途端、湖側からものすごい突風が
吹きつけ、ハンドルを必死で握って落車しないようにするのがやっとでした。
この時かなりの危険性を感じ、大会主催者側が下した判断が本当に正しかっ
たのだと実感しました。私の30秒前にスタートした、昨年ジャパン優勝者の
セーラ・フィエンの姿が時々ちらちらと遠くに見えましたが、30秒の差が意外
にも遠く、折り返しまでは自分がどのポジションにいるのか全くわかりません
でしたが、折り返し地点に迫ってきた所で、大分、前の選手を詰めていること
が確認できました。折り返してから間もなく、2003年ロングデュアスロン世界
戦優勝者のフィオナ・ドカティ(彼女はビーバン・ドカティのお姉さんです)を
パスし、その後すぐにセーラにも追いつきました。60kmを過ぎた辺りで、オー
ストラリアのスーザン・ピーターに追いつかれ、少しずつ姿が遠のいていきまし
たが、強い向かい風が続く帰りでは風に翻弄されないよう自分の走りに集中
したせいか、一時は姿が見えなくなりかけたスーザンに追いつき、トランジッシ
ョンに3番手で帰ってくることができました。

 そして、テントに入ると、2002年NZ優勝者のカレン・バランスが居て、自分の
ポジションがだいぶ良いところにあると確認しました。「よし!ここから粘らなく
ては」と、1分以内の範囲でカレンのあとに続いて急いでテントを飛び出し、
できるだけカレンの後ろ姿が遠ざかっていかないよう試みました。

 往復のランコースは、往きが強い向かい風で苦しく、これほどランで風に悩まさ
れるのは初めてではないかと思う程でしたが、走りのリズムを一定に、ピッチ
を落とさず、フォームを少し修正してトレーニングしてきた事を常にチェックしな
がら、前を見て集中していました。しかし、カレンとの差は少しずつ広がり、
しかも、後ろからセーラが接近してきているのが折り返し手前の行き違う箇
所でわかりました。レース中、後ろを走る選手のタイム差がはっきりしない
ので実際の順位は確実にわかりませんでしたが、ずっと3位で走っているのは
だいたい検討がついていて、あとはセーラとフィオナ、そして、フロリダで2連覇し
ているベラ・コマフォードの追い上げだけが気になっていました。帰りは、折り返し
てからの追い風を利用して、ペースを上げていきましたが、とうとう残りあと6km付
近で、セーラに抜かれてしまいました。その後、なんとか離れないようペース
を上げましたが、セーラの走りに勢いがあり、差は少しずつ広がっていきました。
30秒差に留めておけば可能性はあると信じ、最後まで諦めずにリズムとフォーム
を度々チェックしつつ残りの距離を追い込みましたが、最後湖畔に出てからの2〜3km
は、横からの強風で脚を真っ直ぐ前に出すのもままならない状態で苦しめられました。

 そして、ゴール。全ての選手が戻るまで、順位が定かではなかったのですが、4位は
確実だろうということで、宿に戻りインターネットでチェックしていてくれたオーナーの
方から順位の知らせを受けた時、初めて自分の結果を確認できました。優勝は、
昨年ハワイ4位のジョアンナ・ロウン。彼女は、これでアイアンマンNZにて4連覇を
達成しました。男子は、残念ながら6連覇をかけて臨んだキャメロン・ブラウンが2位、
昨年ランザローテにて優勝したエストニアのアインナラ・ジュハンソンが僅かな差で
優勝を果たしました。

 このレースに向けて、昨年末より自分のフォームの修正を中心に、今までの
トレーニングの見直しをしてきました。スイム、バイク、ランそれぞれに進歩が
見られてきていたので、このレースでどの様な結果として現れるのか楽しみに
していたのですが、残念ながら悪天候の為本来のアイアンマンディスタンスの
レースとはならず、それでも、バイクでは個人タイムトライアル形式において
一人でずっと走った状態でもバイクラップ3位を取れたのは、一つの自信にも
なりました。また、その後のランでも、練習してきた走りの形が少しずつできる
ようになってきて、後半、最近痛めていた脚の痛みが出てきてしまったのが
少々残念ですが、これまでのトレーニングの収穫があったと実感できました。

 今回のプロ女子のメンバーは、7割が各地のアイアンマン優勝者が占め、
私自身、現時点でどの程度戦えるのか楽しみにしていたレースでしたので、
今回の結果でまずまず良い方向に向かっていると判断しています。しかし、
トップ3をあともう少しで逃したのは非常に悔やまれます。それと、今回の
レースで感じた自分の弱い所と、まだそれぞれにいくつか課題が残されて
いるので、一つづつクリアしていきながら目標に近づいていきます。

 今後も活動に更に磨きをかけていきますので、ご支援のほど、
宜しくお願い致します。

 次のレースは、まだ検討中なのですが、現在痛めている脚を良くする
ことを第一に考えて、その様子をみながら5月のアイアンマン・ジャパン
か、6月のアメリカのコーダレンに出場をする予定です。そして、今回の
レースで出場が決定した、10月のハワイアイアンマンを最大の目標とし
て、これからの活動に励みます。 堀 陽子

<リザルト>             Bike    Run   Total
1位 ジョアンナ・ロウン NZL    2:38:46  1:30:43  4:10:32
2位 カリン・バランス  NZL    2:43:14  1:30:15  4:14:32
3位 サーラ・フィエン  AUS    2:45:39  1:29:55  4:16:26
4位 堀 陽子      JPN    2:41:48  1:34:51  4:17:46
5位 スーザン・ピーター AUS   2:41:25  1:37:50  4:20:21
6位 フィオナ・ドカティ NZL     2:53:11  1:27:54  4:21:53
7位 ベラ・コマフォード GBR    2:42:27  1:38:50  4:22:07
8位 ミランダ・スティシーNZL    2:43:22  1:37:59  4:22:59
9位 ヒラリィ・ビスキー USA    2:52:36  1:37:15  4:30:50
10位 パメラ・エンス   CAN    2:51:24  1:44:46  4:37:36