日時:2008年10月27日(月)9:00〜17:00
会場:国立スポーツ科学センター(東京都)
参加者数:57名
参加費:研修会(JTU公認指導者1000円、JTU登録者1500円、
一般2000円)
目 的:1)情報公開をはじめとした地域の指導者の交流とネットワーク作りを
推進する。
2)指導者の自己研鑽を深める。
対 象:強化関係者、JTU公認指導者、指導活動に携わる者、これからトラ
イアスロンの指導を行う者等。
指導者資格への特典:
1)「2008第1回JTUコーチングシンポジウム」はJTU公認指導者の研修会参加として認定される。
2)シンポジウムに参加したJTU公認初級指導者には登録更新時のリポート提出が免除され、JTU公認中級指導者、日体協公認トライアスロン指導員には資格更新時の単位が与えられる。
3)シンポジウム参加により、JTU公認初級指導者養成講習会の受講資格が得られる。
スタッフ:指導者養成委員4名
スケジュール:
9:00-9:10 受付・登録、9:10-9:20開会の辞(大塚常務理事)、
9:20-10:50講演、11:00-12:00講演、
12:00-13:00 昼食・休憩、13:00-17:00拡大強化本部会議
講演者及びタイトル:
講演「北京報告」 〜井出樹里5位入賞までの道のり〜
チームケンズ監督・JTU強化本部長代行 飯島健二郎
講演「JISS医科学サポート・ランニング動作解析」
国立スポーツ科学センター研究員 本間俊行
国立スポーツ科学センター研究員 横澤俊治
講演内容
講演「北京報告」〜井出樹里5位入賞までの道のり〜
講師:飯島健二郎
1)井出選手との出会いから北京オリンピックに至る道程をチームでの練習風景の動画やエピソードを交え楽しく講演。
2)井出選手との出会い:交流のあった玉川大学陸上部の選手であった井出選手が故障時にリハビリを兼ねてチームのスイム練習に参加。卒業後にトライアスロンをやる事を勧めた。
3)高校までは競泳(200mFr 2‘08“)大学で陸上(1000m 34’)という競技力を有していた。
4)日常の練習:スイム3000〜12000m/day バイク 30〜300km/day ラン 〜20km。オリイピックディスタンスと言えども2時間の戦いの中で精神的な鍛錬も必要なので距離の多い練習も入れている。
5)ランが比較的距離が少ないのは故障のリスクを抑えるため。リスク管理としては毎朝心拍数や顔色を確認し体調や精神面を出来るだけ把握して練習内容に反映させた。
6)スイム:400mで4’30”を切って必ず第一集団であがれる量と質。バイク:男子選手、コーチと乗ることによってペースが上がった。ラン:アップダウン、男子とのハイペースな練習。トランジッション:デュアスロン等の実践トレーニング。
7)井出選手の性格:不器用である。とことんやる。マイペース。我慢強い。とにかくやってみる。
8)高い意識(オリンピックに出場するだけでなくメダルを取る)。高い集中力。ロンドンに向けて:スイム400mで4’25”、バイク40kmで60’、ラン10km32’ の力が必要。
講演
JISS医科学サポート・ランニング動作解析
講師:本間俊行 横澤俊治
1)石垣島・東京港・北京五輪のランをハイスピードカメラで撮影し、脚の動きの違いを分析した。
2)スティックピクチャーを利用した分析では、北京五輪女子1位のエマ・スノーシル選手(豪)のランニングフォームは、腿が高く着地時に膝下を振り出さないという特徴が見受けられた。
3)スノーシル選手と日本人選手の違いとしては、ストライド差が大きい事が挙げられる。(逆に、ピッチについてはあまり変わらない)
4)ストライドとは「足が地面に着いている時の移動距離+空中の移動距離」であり、スノーシル選手と日本人選手を比べると、接地中は差がなく、空中の距離の差が大きい。
5)スノーシル選手は大股でストライドを広げることはせず、空中で距離を獲得している。(これについては、外国人男子選手と日本人男子選手を比べた結果も同様であった)
6)ストライドを広げるためには、上下のバネを生かすか、回転で稼ぐかの2つの方法がある。
7)スノーシル選手は屈伸運動より脚のスイングを強調した動作でストライドを広げている。また接地後の重心下降量が小さく、スムーズな重心移動が可能となり、接地時間が短い。
8)トップランナーの特徴である「上に飛ぶ(ストライドを伸ばす)、下に沈まない(潰れない)」を、トライアスロンのランでも実践できている。
9)スノーシル選手・走動作の特徴。・大股でストライドを広げず、空中で大きなストライドを獲得。接地時間が短い。接地後に膝が潰れないため、重心の下降が小さい。接地時に膝下が振り出されていない。屈伸よりも脚のスイングを強調。
◎全体の所感
1)今回の「シンポジウム及び研修会」は昨年同様に日本選手権の翌日という日程パターンで行った。
参加者からの声では、2年目の日程パターンにもかかわらず、「定着感がある」との感想があった。その需要から広範囲に渡る多開催化が不可の現状を考えると全国の指導者が集まりやすい日本選手権に絡めて行うのは今後も継続すべきだと感じた。同様の発想から、次年度から始まる「国体競技」でも「研修会」もしくは「指導者会議」を行いたいと感じた。
2)内容については、両講演とも参加者の耳をぐいぐいと引きつける話で参加者には非常に好評であった。井出樹里選手を題材とした飯島強化本部長代行の講演は「タイムリーかつ身近な題材」、「理解しやすい話」で90分があっと言う間に過ぎた感があった。参加者が昨年の30名から57名に増えたのもこの講演の効果があったのかもしれない。
3)JISS研究員による研究発表は継続的に行っている題材だけあって回を追う毎に内容が核心に近づいている。有益な情報が多く、参加者から積極的な質問を受けていた。今後も指導者にとってより多面的な研鑽の場となるような内容のシンポジウムや研修会を開催していきたい。
=以上=